「すぐ辞める業界」のイメージに惑わされない会社選びの視点
【この記事のポイント】
建設業は新規高卒3年以内離職率が40%超と全産業平均より高く、「会社選び」で差がつきやすい業界です。
正直なところ、離職率だけ見ても不十分で、「なぜ辞めているのか」「どんな人が残っているのか」までセットで見る必要があります。
迷っているなら、「求人票+口コミ+面接での質問」の3点から、長く働けるかをチェックするのがおすすめです。
今日のおさらい:要点3つ
- 建設業の新規高卒3年以内離職率は約40%で、全産業平均より5ポイント前後高い水準。
- 高卒・短大卒では全産業より離職率が高い一方、大卒の建設業離職率は全産業平均を下回るなど、学歴・会社規模で傾向が変わる。
- 「離職率が高い=悪い会社」とは限らず、独立・キャリアアップも含まれるため、「中身」を見極める視点が重要。
この記事の結論
一言で言うと「建設業で長く働ける会社を選ぶには、“離職率の数字”だけでなく、“辞める理由と残る理由”の両方を確認すること」が不可欠です。
最も重要なのは、「若手がどのくらい辞めているか」「どんな人が何年くらい残っているか」「離職原因に会社として手を打っているか」を具体的に聞くことです。
失敗しないためには、「離職率・労働時間・人間関係・教育・待遇」の5つを、求人票・面接・現場見学で立体的にチェックすることです。
建設業の離職率の現状と特徴
データで見る「建設業の3年以内離職率」
厚生労働省が公表した新規学卒就職者の3年以内離職率によると、全産業の新規高卒就職者は38.4%、建設業の新規高卒就職者は40%超とされており、建設業の方が高い傾向があります。より詳しい調査では、建設業の2021年3月卒の3年以内離職率は35.6%で、高卒が43.2%、短大等卒が41.5%、大卒が30.7%というデータもあります。
興味深いのは、2003年卒と比べると、3年以内離職率は高卒で約14ポイント、短大等卒で約9ポイント、大卒で約7ポイント低下しており、長期的には改善傾向にあることです。正直なところ、「建設業=すぐ辞める」というイメージだけでは、今の実態を捉えきれません。
1年目・2年目・3年目で辞める割合の違い
厚生労働省や業界紙の整理によると、建設業でも全産業でも、1年目は15〜20%、2年目は10〜14%、3年目は8〜10%という形で、早い段階ほど辞める割合が高くなっています。建設業では、この各年次の離職率が全産業よりやや高いため、3年トータルで見ても全産業を上回っている、という構図です。
正直なところ、「とりあえず3年」の前に、1年目の壁をどう越えるかが勝負です。その意味で、「1年目でどのくらい辞めているか」「その理由を会社が把握しているか」は、長く働ける職場かどうかを見極めるうえで重要なヒントになります。
筆者の実体験①:1年目で3人中2人が辞めた会社
数年前、私はある中小建設会社の採用サイト制作を担当しました。その会社では、ある年に新卒3人を採用したものの、1年目の終わりまでに2人が退職していました。
社長に理由を聞くと、社長「長時間労働と、現場の人間関係だと思います。ただ、正直なところ、ちゃんと話を聞く前に辞められてしまって…。」と話していました。
一方で、残った1人(20代男性)の話を聞いてみると、「実は、自分も何度か辞めようと思ったんです。でも、現場の職長が『まずは1年、一緒に乗り越えよう』って何度も声をかけてくれて。“施工管理 辞めたい”と調べながらも、その言葉を思い出して踏みとどまった感じです。」と語ってくれました。
このとき、「同じ会社でも、配属先とフォローの有無で、離職率は大きく変わる」と痛感しました。
離職率が高い会社に共通する特徴
長時間労働・休日の少なさが当たり前になっている
施工管理の離職率が高い背景として、長時間労働と休日の取りづらさは繰り返し指摘されています。ある調査では、繁忙期に月80〜100時間以上の残業が発生している施工管理も多く、工程が詰まりすぎている、人員が足りず一人当たりの負荷が高い、そもそも「長時間働くことが美徳」という文化が残っている、といった構造が離職に直結していると分析されています。
よくあるのが、「忙しいのは今だけ」と言われ続けて、気づけば1年中忙しい状態になっているパターンです。正直なところ、「今だけ」が半年以上続いている現場は、長く働ける環境とは言いにくいです。
人間関係・指導スタイルの問題
建設業の離職要因としては、人間関係や指導スタイルも大きな位置を占めます。怒鳴る指導が当たり前、「見て覚えろ」文化が根強い、ミスを共有して改善するのではなく個人の性格や能力のせいにする、といった職場では、特に若手の離職率が高くなりがちです。
ある調査では、「やりがいの欠如」と「待遇への不満」の両方が、建設業の働きにくさの大きな原因として挙げられています。正直なところ、給与や休みがそこそこでも、「毎日怒鳴られてメンタルが削られる」環境では、長く働くのは難しいです。
教育・フォロー体制が弱い
建設業における離職率の分析を行ったレポートでは、教育が現場任せ、OJTの質がバラついている、フォロー面談やキャリア面談がほとんどない、といった「育成面の弱さ」も離職の背景として挙げられています。
よくある失敗は、「とりあえず現場に出して、あとは先輩に付ける」だけで、何を学ばせるのか、いつどこまで任せるのか、困ったときに誰がフォローするのか、といった設計がないことです。実は、本人の能力よりも「育てる仕組み」が問題で、辞めてしまうケースも多いのです。
離職率が低く「長く働ける会社」の特徴
若手・中堅・ベテランのバランスが良い
長く働ける建設会社では、若手(20代)・中堅(30〜40代)・ベテラン(50代以上)の年齢バランスが比較的整っていることが多いです。総務省のデータでは、全産業の29歳以下の割合が16.9%に対し、建設業は11.7%と若手が少ない状況ですが、離職率の低い会社ほどこの「若手比率」を意識的に増やそうとしています。
実は、若手が多すぎても「誰も教えられない」状態になり、中堅・ベテランばかりでも「世代交代が進まない」状態になります。バランスが取れている会社は、自然と“育てる空気”が生まれやすく、結果として離職率も落ち着きやすいのです。
離職理由をきちんと把握し、対策している
離職率が低い会社の共通点として、「辞めた人の理由をきちんと聞いて、対策に活かしている」ことがあります。退職面談で本音を聞く、離職理由をカテゴリごとに集計する(労働時間、人間関係、給与、キャリアなど)、多かった理由から順に改善策を打つ、というサイクルを回している会社は、たとえ現時点の離職率が高くても、数年かけて確実に下げていく力があります。
逆に、「辞めた人のことは忘れよう」「あいつは根性がなかった」で終わる会社は、同じ理由で人が辞めることを繰り返しがちです。正直なところ、離職率そのものよりも、「離職に向き合う姿勢」を見た方が、その会社の伸びしろが分かります。
筆者の実体験②:離職率30%→10%台に改善した会社
私は以前、ある建設会社の離職率改善プロジェクトに関わりました。着手前は、新卒3年以内離職率が約30%、中途入社3年以内離職率が約25%という状態でした。
そこで、退職者へのヒアリング、現場別の労働時間・休日数の見える化、若手向けメンター制度の導入を行い、2年かけて改善に取り組みました。
2年後、新卒3年以内離職率は約15%まで下がり、社長は「実は、仕組みだけでなく、“辞めたい”と思ったときに相談できる人を用意したのが大きかったのかもしれません。」と話していました。面白いことに、離職率が下がると同時に、「紹介入社」(社員の知人や友人からの入社)も増えました。長く働ける会社には、自然と人が集まるのだと感じた事例です。
長く働ける職場を見極める具体的なチェックポイント
求人票・会社情報で見るべき数字とサイン
- 離職率や定着率が記載されているか(例:「3年定着率80%」など。数値を公開している会社は、環境に一定の自信があるサインになりやすい)
- 平均勤続年数(全産業の平均勤続年数は約12年前後とされる中で、建設業はそれよりやや短い傾向がある)
- 年齢構成・男女比(若手や女性が一定数いる会社は、環境改善に取り組んでいる可能性が高い)
また、業界全体のデータとして、建設業全体の離職率は約10%台前半という見方もあり、「他産業より特別高いわけではない」という指摘もあります。ただし、高卒の若手(3年以内)に限ると全産業より明確に高いことが課題とされています。
面接で必ず聞きたい「離職と定着」の質問
- 「直近3年で、新卒・中途の方はどれくらい残っていますか?」
- 「辞めてしまう方の理由として、多いのはどのようなものですか?」
- 「離職率を下げるために、最近どんな取り組みをされていますか?」
ここで、「うちは離職率が高くて…正直、長時間労働がネックです。ただ、ここ2年で週休2日を増やしたり、現場の人数を増やしたりして改善しています。」といった答えが返ってくる会社は、実は「伸びしろがある会社」です。逆に、「辞める人はどこに行っても辞めますよ。」という一言で片付ける会社は、離職に向き合う姿勢が弱い可能性があります。
口コミ・現場の声とどう付き合うか
求人サイトやSNSには、「辞めた人の声」「現場の不満」が多く上がっていることもあります。よくある失敗は、1件の悪い口コミだけで会社全体を決めつけてしまう、逆に良い口コミだけを信じて現場の実態を見ない、という両極端です。
正直なところ、口コミは「煙が出ている場所」を知るための材料として使い、どの口コミでも繰り返し出てくる不満は何か(例:長時間労働、人間関係、教育不足)を確認し、その点を面接で質問して会社の反応を見る、という使い方をすると、かなり有効な情報源になります。
こういう人は今すぐ相談すべき・まだ間に合う人
今すぐ相談すべき人
- 入社後1〜2年で、同年代の同僚が半分以上辞めているのに、特に対策がとられていない。
- 長時間労働・休日の少なさ・人間関係などに明らかな問題があるのに、「この業界はどこも同じ」と片付けられている。
- 自分自身も「いつ辞めてもおかしくない」と感じながら、なんとなく惰性で続けている。
この状態なら、厚生労働省や自治体の相談窓口、あるいは建設業に強い転職エージェントに、「今の会社の状況」と「自分の働き方」を一度客観的に見てもらうタイミングです。「どこも同じ」ではなく、「対策を打てている会社」と「放置している会社」の差は確実に広がりつつあります。
この状態ならまだ間に合う人
- 離職者は出ているが、その理由を会社が把握し、改善策を打とうとしている。
- 上司や人事と、働き方やキャリアについて率直に話せる場がある。
- 自分のしんどさを言葉にして伝えれば、配置転換や業務の見直しなどの可能性がありそうだと感じる。
この場合は、自分の不安や希望を具体的に整理して上司や人事と話す、「今の会社で続ける場合」と「転職する場合」の両方のシナリオを考える、といった行動から始める価値があります。実際、「辞めるつもりで相談したら、思った以上に話を聞いてくれて、働き方が変わった」というケースも少なくありません。
迷っているなら「自分の定着リスク」を棚卸しする
「建設業 離職率 やばい」「施工管理 辞めたい」と調べてしまうときは、不安が先行している状態です。そういうときほど、次の項目ごとに「今の会社」を5段階評価してみてください。
- 労働時間(1日・1カ月)
- 休日日数と有給の取りやすさ
- 人間関係(相談できる人の有無)
- 教育・キャリアの見通し
- 給与・昇給の納得感
そのうえで、「このまま続けた場合の3年後」「会社を変えた場合の3年後」をざっくりイメージすると、自分が本当に求めているのが「会社を変えること」なのか「働き方を変えること」なのかが見えてきます。
よくある質問
Q1. 建設業の離職率は、他の業界と比べてどれくらい高いですか?
A1. 新規高卒3年以内離職率で見ると、全産業が35%超に対し、建設業は40%超と数ポイント高い水準です。
Q2. 離職率が高い会社は、必ず避けるべきですか?
A2. 一概には言えません。独立やキャリアアップによる離職もあり、「なぜ辞めているのか」「残っている人の満足度」は別途確認が必要です。
Q3. 会社の離職率はどうやって調べればいいですか?
A3. 求人票や会社説明で「3年定着率」「平均勤続年数」が出ていれば参考になります。出ていない場合は、面接で素直に質問して構いません。
Q4. 小さな会社ほど離職率は高いですか?
A4. 厚生労働省のデータでは、事業所規模が小さいほど3年以内離職率が高い傾向があります。ただし、中小でも定着率の高い会社はあるため、個別確認が重要です。
Q5. 施工管理は特に離職率が高いと聞きますが、本当ですか?
A5. 長時間労働や休日の取りづらさなどから、施工管理の離職率が高いのは事実とされています。一方で、働き方改革や人員増強で改善を進めている会社もあります。
Q6. 離職率が公開されていない場合、その会社は避けるべきですか?
A6. 必ずしもNGではありませんが、面接で「直近の定着状況」や「辞める人の理由」を具体的に聞き、その反応で判断するのが現実的です。
Q7. 離職率が低い会社なら、安心して入社して大丈夫ですか?
A7. 離職率が低くても、「そもそも採用人数が少ない」「辞めたくても辞められない雰囲気」があるケースもゼロではありません。数字に加え、現場見学や社員の声も合わせて見ることが大切です。
まとめ
建設業の新規高卒3年以内離職率は40%超と全産業平均より高く、とくに1年目に辞める割合が大きいのが特徴です。離職率が高い背景には、長時間労働・休日の少なさ・人間関係・教育不足・キャリア不透明感などが複合的に関わっています。
一方で、長く働ける職場には共通した特徴があります。若手・中堅・ベテランの年齢バランスが良く、世代交代と育成が自然に進んでいることが、その一つです。
さらに、離職理由をきちんと把握して改善に取り組み、働きやすさ(労働時間・環境・教育・待遇)への投資を続けている会社ほど、定着率は安定しやすくなります。会社選びの際は、離職率の数字そのものより、こうした「向き合う姿勢」と「改善の継続」を見極めることが、長く働ける職場にたどり着く近道です。
